私の愛した彼は、こわい人
 ユウキさんはため息と共に副流煙を吐き出した。

「あなた……アスカだっけ?」
「はい」
「ホント哀れな女ね」
「えっ」
「洗脳されてるじゃない、そのDV男に」
「そんな」
「いらない気遣ってご機嫌取れば大丈夫~なんて。異常よ。そんなの全然幸せじゃない。さっさと目、覚ましたら?」

 ユウキさんにぴしゃりと言われ、私は唖然とする。
 ……私たちの関係は、異常? 幸せじゃない? 目を、覚ますべき……?
 ドクドクと、心臓が激しく音を立てる。
 私はハワイアンカクテルで喉を潤した。甘くて爽やかな香りが口いっぱいに広がって美味しいはずなのに。虚しさが舌の上を支配した。

「私、そんなつもりじゃ……」
「感覚が麻痺してるわね。『私の彼氏は優しい』『暴力を振るわれても私が気をつければいい』なんて、呪いみたいに自分に言い聞かせてさあ。本当に愛してるの?」
「え……」

 ユウキさんに問われ、言葉に詰まってしまう。
 なぜ。すぐに「はい」と答えられないの。

「これまでDV男に沼ってた女を何人も見てきたけどさぁ、みんなおかしくなってるのよね。依存したら終わりよ。とにかく別れなさい。そのまま付き合っていても精神が壊れるだけ」
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