私の愛した彼は、こわい人
 もはや、なにも反論できなかった。心臓がバクバクして、息苦しい。

「一人にしたら危ないわ。ジン、あんたが責任を取りなさい」
「あ? 俺が?」
「あんたが連れてきたんだから当たり前でしょ。最後まで守ってやんなさいよ。とりあえず今晩、この子を家に泊めてやったら?」

 ……泊める。泊まる?
 えっ。オーナーの家に?

 ユウキさんのとんでもない提案に驚いたのは、私だけじゃない。
 ジュースの入ったグラスを慌てた様子でテーブルに置き、オーナーは抗議をはじめる。

「いくらなんでもまずいだろ。俺の立場ってものが」
「はっ。立場? まさかジン。この子と二人きりで夜を過ごすことに抵抗があるってわけ? ガキじゃあるまいし、いちいち尻込みすんじゃないわよ。むしろあんたがこの子を襲って、DV男を忘れさせるくらいデロデロにしてあげればいいんじゃない」
「いい加減にしろ。俺はそんなゲスい男じゃない!」
「とにかくあたしには関係ないから。アスカも考えるのよ。DV男のところに戻ってまた虐められるのか、とりあえずジンに匿ってもらうのか。自分で決めなさい」

 答えなんて誰にだってわかるはずだけどね、と加えて、ユウキさんは他のお客さんのお相手をはじめた。
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