私の愛した彼は、こわい人
 カメラを睨みつけながらこちらの応答を待つユウキさん。
 私は慌てて通話ボタンを押す。

「ユウキさんですか? ごめんなさい、神楽オーナーは留守で……」
「アスカね?」
「はい」
「あなたに用があって来たの。ジンはあたしが来ること知ってるから。とりあえずロック解除してくれない?」
「あっ、はい。今開けます」

 ユウキさんが私に用事ってなんだろう?
 三度のオートロック解除を経てユウキさんが部屋にやって来た。
 少し疲れた顔をしている。

「邪魔するわよー」

 ユウキさんは家に上がるなり両手に抱えた大きな紙袋を私に手渡してきた。慣れた様子でリビングに入ると、コートを脱いでソファに腰かける。

「とりあえず着替えとか下着とかメイク道具とか、あんた用に持ってきたわよ。ないと不便でしょう?」
「え。こんなにたくさん」
ジンの店(キャバクラ店)で働いてた子たちが客から貢がれたものよ。みんな使わずに飛んだけどね。アスカの趣味に合うか知らないけど、とりあえずあげる」

 見るとほとんどが有名ブランドのもので、自分ではなかなか手が出せない代物ばかり。ロングコートやワンピース、ワイシャツ、スカートその他もろもろ。化粧品だって銀座に店を構えるような高級ブランドのものがたくさんあって……。
 私は驚き、思わず袋を閉じた。
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