私の愛した彼は、こわい人
 これは、タクトの仕返しなんだ。
 タクトにリュウお兄さんの話をしたことはないけれど、私が御守りを大切にしていたのを知っている。タクトに「古い御守りなんて捨てろ」と言われた過去があり、全力で拒否したことがあるから。
 私がタクトを怒らせたのがいけないんだ。私が悪い。タクトから逃げた、私が。全部。全部!
 蹲っていると、ユウキさんに肩を軽く叩かれた。

「アスカ。立って」
「……」
「もう行くわよ」
「……」
「ちょっと。アスカ!?」

 肩を揺さぶられても一切反応ができない。
 痺れを切らせたのか、ユウキさんは私の両腕を掴んで無理やり立たせた。

「いい加減にしなさい。しっかりして!!」

 ユウキさんが私の腕を掴む力は強くて、それでいて震えていて。

 私は鞄を手にし、フラフラの足でアパートをあとにした。
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