私の愛した彼は、こわい人
 今でもよく覚えている。
 祖母と初めて会ったのは、私が五歳のとき。ヒゴロモソウまでわざわざ会いに来てくれた。私が生まれたことも知らなかったみたいで、涙ぐんでいた。
 母がどんな人かなんて知らない。でも私をまともに育ててくれない人だったから、きっと冷たい人なんだと幼いながらに思ってた。
 それとは裏腹に祖母はとてもあたたかい人だった。

 私を迎え入れてくれた日。
 祖母と手を繫いで一緒に帰った。家は東京の郊外にある古民家で、畳の香りがするあたたかい場所だった。
 祖父は数年前に亡くなったそうで広い家に一人で暮らしていたらしい。

 ──アスカちゃんと一緒に暮らせることになって、ばあばは嬉しいよ。遠慮しないで、今日からここがあなたのお家だよ──

 そう言ってくれたおばあちゃんの笑顔は太陽みたいに輝いていた。
 これまでに経験したことのない愛情を受け、私はすぐにおばあちゃんのことが大好きになった。足腰が弱いおばあちゃんのために、できる限りお手伝いもした。
 これが、家族なんだ。
 平穏な日々を送ることができた。

 でも──おばあちゃんは、私が十九歳のときに癌で亡くなってしまった。
 成人の日のお祝いを楽しみにしてくれていたのに。一年前から振り袖を用意してくれていたのに。晴れ姿を見せられないまま大好きなおばあちゃんとお別れをした。 
 葬式にも、私の母は顔を出さなかった。連絡もつかないから、おばあちゃんが亡くなったことさえ知らないんだと思う。
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