私の愛した彼は、こわい人
 独りになった私は、アルバイトをしてあちこち転々としていた。
 そのときに出会ったのが、ベル・フルール。学生時代の友人、コハルの紹介で最初はアルバイトとして受付スタッフをしていた。
 幼い頃から地味で、内向的で、自分に自信がなかった私はエステの世界に入って衝撃を受けた。サロンに通われるお客様がどんどん綺麗になっていく。綺麗になると、みんな幸せそうに笑うの。
 私は美容の世界に魅了され、自分自身も磨いていきたいと努力するようになった。容姿だけじゃなくて、中身も変えていこうと。
 仕事にもどんどん力が入った。
 真面目に働いていると、ある日阿川店長から社員にならないかと打診されて。もちろん私はふたつ返事で承諾した。店長からの誘いを受けた私は、ベル・フルールのエステティシャンとして働くようになったんだ。
 それがきっかけでサロンにやって来るタクトに出会ってしまったけれど……後悔していない。
 神楽オーナー──リュウお兄さん──と再会できたから。

「……アスカも、色々あったんだな」

 目を伏せるオーナーの声が小さくなる。

「せっかくお祖母さんと暮らしていたのに。今は完全に天涯孤独か」
「そうですね」

 未だにおばあちゃんが夢に出てくることもある。たまに思い出すと、寂しくなることだってある。
 時間を取って、またお墓参りに行きたいな。
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