【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
紗良は航太の肩にそっと頭を寄せ、大きく息を吸い込んだ。
その吐息が、少しだけ震えているように感じて、航太はそっと彼女の頭を撫でた。

「紗良、ちゃんと原因がわかって、治療の方針も立てられてよかったよ」
その声は、まるで安心を分け与えるような穏やかさを帯びていた。

紗良は、小さな声で呟くように言った。
「航太くん、たくさん迷惑かけてごめんね。……何でもかんでもしてもらって、ありがとうなんて言葉じゃ足りないくらい、感謝してるよ」

航太は少しだけ首を振ると、優しく笑った。
「俺はさ、紗良が幸せそうにしてるのが、俺の幸せなんだよ。紗良が辛そうにしてると……何してても楽しくないんだよね」

その言葉を受けて、紗良の呼吸がわずかに乱れた。
鼻をすする小さな音が、沈黙の中に滲む。

それを察した航太は、そっと言葉をかけた。
「泣かないの。俺がいるでしょ」

紗良は小さく笑って、かすれるような声で言った。
「幸せすぎて……泣きたくなっちゃった。……いつも泣いてばっかで、ごめんね」

「泣いてても、笑ってても……そのままの紗良が、好きだよ」

その言葉に、紗良はゆっくり顔を上げた。
目元は潤んでいたが、唇は確かに微笑んでいた。

「航太くんも、困ったことがあったらなんでも相談してね。……私もやる時はやるから」

その言葉に航太は「わかったよ」と静かに返し、
そっと紗良の頬に手を添えると——
そのまま、迷いなく唇を重ねた。

ソファの上で寄り添う2人の時間だけが、春の夜に静かに流れていた。
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