【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
航太は、検索結果から何かに手が届きそうな感覚を覚えていた。
だが――今ここで、曖昧な仮説を紗良に伝えて不安にさせるべきではない。
そう思い、指を止めてパソコンをそっと机の上に置く。

そして、紗良にやわらかく尋ねた。

「高熱が定期的に出るようになったって、自分で気づいたのは……ここ1年のこと?」

紗良は、毛布にくるまりながら小さく首を振った。
「ううん……大学に入ったくらいからかな。なんか、定期的に熱出るなって思い始めたの、その頃。」

「……そんな前からか。」
航太は思わず息を飲んだ。警護に就いていた頃、そんな様子は見た記憶がない。

「でも、俺が警護に入ってたときは……インフル以外に熱出てた話、聞かなかったけど」
そう言って目を細めると、紗良は少し困ったように、けれど笑いながら言った。

「あったよ。インフルにかかる2週間くらい前かな。でも、いつものだと思って……解熱剤飲んで、ごまかしてた。」

「……ごまかしてた?」
「だって、そのとき航太くんに心配されたくなかったし……あの時期、大変そうだったじゃん?」

半笑いのままそう話す紗良を見て、航太は胸の奥で静かに何かが疼くのを感じた。

彼女はずっと、一人で耐えてきたのだ。
誰にも言わずに、「大したことない」と、自分の不調を見て見ぬふりして。

「……ほんと、手のかかる子だな」
航太はぽつりとつぶやき、そっと紗良の頭を撫でた。

この先、もっときちんと向き合ってやらなければ――そんな想いが、静かに心を満たしていった。
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