【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
休日の朝。
ふたりは少し寝坊をして、ゆったりと朝ごはんを食べ、洗い物や掃除を終えると、ようやく一息ついてリビングに腰を落ち着けた。

ソファに座ってコーヒーを口にした航太が、ふとカップを置いて言った。

「ちょっと……話しておきたいことがあるんだけど」

その口調が少しだけ真剣だったので、紗良は「なーに?」と首を傾げながら、隣に座った。

航太は少しだけ呼吸を整えるように目を伏せ、それから優しく、でもしっかりと目を見て話し出した。

「紗良……周期的に熱が出ること、ずっと気になってたんだ。風邪っぽいけど違うって、自分でも言ってただろ?」

紗良は少し驚いたように目を丸くする。

「最近、友人に話して、ちょっと医学的に詳しく聞いてみた。……もしかしたら、“周期性発熱症候群”っていう自己炎症性疾患の可能性があるかもしれない」

航太の声は落ち着いていたが、その言葉のひとつひとつには確かな思いやりがこもっていた。

「今すぐってわけじゃない。でも、次に同じような熱が出たとき、ちゃんと診てもらって、必要なら検査も受けてほしい」

紗良は真剣なまなざしで彼を見つめている。

「俺が病院も探すし、専門の医師にも連絡取っておく。……だから、あんまり心配しすぎないで。全部、俺に任せてくれればいい」

そう言って、航太は紗良の手をそっと握った。

「紗良のこと、本当に大切に思ってる。だからこそ、ちゃんと知っておきたいんだ。これからのことも、ずっと一緒にいるつもりだから」

紗良はしばらく黙っていたが、やがてふっと微笑み、小さく頷いた。

「……ありがとう、航太くん。そう言ってくれるだけで、すごく安心した」

彼女の声は少し震えていたけれど、確かに温かさを含んでいた。
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