【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
紗良は、くすぐり作戦が失敗したことで小さく肩を落としたが、すぐに次の作戦を思いついたように顔を上げた。
彼女はひょいと航太の膝の上に腰かけると、ふわりと航太の胸に顔を埋める。

「航太くんの匂い、好き。……なんか、落ち着くんだよね」

そう言いながら、すりすりと顔をこすりつけるように甘えてくる。

「警護のときに……一度だけ、抱っこしてくれた時も。あの時も、すごく安心した。なんだろう……安心の匂いっていうか、守られてるって感じがして」

その囁くような声とぬくもりに、航太の中で何かがぶちんと切れた。

心臓を、鷲掴みにされたような感覚。

「……苦しい……」

それだけ絞り出すように言うと、航太はソファの背もたれに仰向けに倒れ込んだ。
息が詰まる。息苦しい。可愛すぎて、もうだめだ。

「えっ、ちょっ、航太くん!? どうしたの!? 大丈夫!?」

焦ったようにのしかかってくる紗良が、航太の胸をぽんぽんと軽く叩く。
顔は不安げそのもの。

航太は眉間に深く皺を寄せたまま、荒くなりそうな呼吸を必死に整えようとしていた。

「……ご褒美、返上する……だからもうちょっと距離取って……頼む……」

それでも、顔だけは彼女の額にぴたりと寄せていた。
甘やかすか突き放すか、自分の中の理性と本能が戦っている。

紗良は少し呆気にとられながらも、なんだか嬉しそうに笑った。
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