【番外編】SP 橘は、“甘やかし専門医”です
紗良は、まだソファに横たわる航太の手をとって、自分の頭の上にそっと乗せた。
「なでて〜」と言わんばかりに、いたずらっぽくにっこりと笑う。

航太は、そんな紗良に負けたように苦笑しながら、その柔らかな髪をわしゃわしゃと優しく撫でた。
「ほんとに……甘え上手だな」
そう呟きつつも、嫌な様子はまるでない。

そのまま、背もたれに寄りかかっていた体を少しだけ起こし、紗良の両脇へと両手をそっと滑らせる。
まるで支えるように添えられた指に、紗良は一瞬、ぴたりと動きを止めた。

キスの予感——。
彼の目を見つめながら、とろんとした表情で、自然と唇へと視線を落とす紗良。
(来る……)

しかし次の瞬間、航太の指先にじわりと力が入り、その脇腹をくすぐりはじめた。

「ちょっ、や、やめて!あははっ、ずるい〜っ!!」
紗良は航太の膝の上でジタバタと暴れながら、笑い声をあげる。
「こうたくん!やめてってばああっ!」

航太はそんな紗良の反応に満足げに笑いながら、
「あれ?ご褒美って言ってたの、どこの誰だっけ?」と、追い討ちのくすぐり。

「ほんとにずるい〜〜!!!」
紗良は笑いすぎて涙を浮かべながら、必死に航太の腕を掴んでくる。

その表情があまりに無防備で、幸せそうで——
航太の胸の奥に、ふわりとぬくもりが広がるのだった。
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