モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
「どっちのキス、思い出したんだ?」
イジワルそうに早野が声を掛けるが、あかりは答えなかった。答えられなかった。
「まぁ、いいさ」
残っていたビールを飲み干すと、早野は携帯を確認する。何かの連絡が来ていたのだろう。ポチポチと携帯を操作し始めた早野をあかりは黙って見つめていた。
早野は返信を打ち終わるやいなや、おもむろに伝票を掴んだ。
「さて、オジサンはそろそろ時間切れだ。ここまでのは奢っちゃる」
立ち上がった早野は、忘れていた、というようにあかりを振り返る。
「山科くんと結婚しておいた方が仕事も理解してもらえるし、気持ちは楽だとは思うけど……。ぼくとしては今、あかりの頭に浮かんだのが幼馴染くんだったらいいな、って考えているよ」
「……なぜですか、早野さん」
「そんなの簡単だよ」
早野はニヤリと笑う。
「あかりと結婚したら山科くん、辞めちゃうんでしょ?有能な若手が居なくなるのは困るからねー」
「なっ……」
「じゃっ、また明日」
言いたいことを伝えて満足した様子の早野はヒラヒラと手を振り、鼻歌を歌いながら去っていく。