モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています


「ったく。抱かれて絆されて、それで人生決めていいわけないだろうが」
 諭す颯の言葉とは反対に、声はあかりを求めているように響いてくる。颯が葛藤の末、抱かない選択をしてくれていることにあかりは涙が滲んでくる。
「泣くな。勝手に涙が出てくるのはそれだけ疲れているんだ。もう寝ろ。目の下のクマ、すごいぞ」
 上に報告を上げるときみたいに簡潔な物言いであかりに注意をした颯は、寝かしつけるようにポンポンと明かりの後頭部を数回叩く。
 子ども扱いに不満はあったが、大人しくされるがままにされる。
「それに抱きしめられる(こっち)の方が好きだろうが」
 自分の好きなことを知り尽くしている颯の言葉は、ぶっきらぼうな物言いとは反対にすごく優しく響く。
 抱き寄せる腕もすべてが慈愛に満ちていて、あかりは颯の胸の中でホッと力を抜いた。
 安心したからか、それとも颯の胸の鼓動がちょうど耳元で聞こえてきたからか。
 日頃の睡眠不足と、予期しない恋愛がらみの悩みで疲れ切っていたあかりは、いつしかウトウトと微睡み始めた。

「寝ろ」
 颯の声に引きづられるようにあかりはゆっくりと落ちていこうとする。それに抗い、あかりは口を開いた。
「颯さん……」
「寝ろって」
 心配と呆れが混じった颯の返答。あかりはそれに逆らいつつ、眠さで重くなった口を開けた。

「ウソじゃないから」
「……なにが?」
「キスを受け入れたことは……気持ちを誤魔化したわけじゃないから」
「そんなこと」
 颯が笑ったような気配がするが、声色は何故か悲しそうに聞こえた。

「とっくに知っている」

 あかりは声の異変に気付くことなく、颯の返答に安心して急速に夢の世界へ落ちていったのだった。
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