モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
「山科と別れたんだって?」
あかりは苦笑いする。わざわざ近づいて来て何を話すかと思えば、このことか。
「……相変わらずお耳が早いですね」
「まぁな」
誰からの情報なのかは訊ねなくてもわかっている。本人からだ。
元カレの山科颯と久保は同期で同じ刑事課だし、仲がいい。
いくら噂が流れるのが早い警察であっても、久保の性格からして裏取りもせずにあかりに話すことはない。
「あいつ浮気でもしてたん?ずいぶんこっぴどい振り方したらしいじゃん」
案の定、颯から事細かく聞き出しているようだ。冗談めかしながらも目をすがめて訊ねてくる久保に、あかりは笑いながらも返答に困る。
(颯さん、どこまで話しているんだ?)
久保がいくら口が堅いとはいえ、職場でペラペラ喋るとすぐに噂になる。それも尾ひれ背びれがついて。
どうしようか考えあぐねているあかりを楽しそうに見ながら待っていた久保がいきなり「いてっ」と声を上げた。