モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
ピンポーン、ピンポーン!
驚いてすぐに立ち上がることができないあかりを呼びつけるように、何度もしつこく鳴る音に重い腰を上げて画面を覗いてみたら、予想外の人物が写っていた。
「颯さん……?」
『早く開けろ』
無意識に応答していたあかりに、颯は早口でまくしたてる。命令口調の颯にあかりは弾かれたように玄関の鍵を開けた。ドアをぶち破るのでは、というくらいの勢いで飛び込んで来た颯はおもむろにあかりを抱きしめる。
「はや……しご……」
あかりは颯の体を押し返しながら声を発する。混乱したあかりの舌はまともに回らない。今、颯が所属している刑事課は鬼のように忙しい。颯もある事件の調査で現場指揮を取りながら人手が足りないからと、自らも張り込みにも出張っていたはずだ。本来ならここにいる時間などないはずだ。
きちんと言葉にならないあかりの訴えは、正しく颯に伝わったようだ。
「十分だけといって時間をもらった。幸いにも今日は久保が余っていたからな」
警部補に昇格して係長になった颯と、巡査長とはいえ、昇任試験を一度も合格していない平警官の久保なら組み合わせとしてありえなくはない。ないが、わざわざ久保に命じてまであかりの家に来た颯の意図がわからない。
思い切り顔に書いていたのだろう。颯は眉間にシワを寄せると、先程よりも強くあかりを抱きしめた。