モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています

過去と今と


「悪い、遅くなった」
 カウンターで注文したコーヒーを片手にした颯は、あかりの向かいに腰掛けた。
「いえ」
 あかりは首を振り、読んでいた本をカバンにしまった。その動作に颯は軽く目を細める。

 (気付いた……のかな)

 今二人で座っている席も、読んでいる本も、あかりが飲んでいた飲み物まで、半年ほど前に颯に別れを告げた時と同じシチュエーションだということを。

「で、話があるんだって?」
 颯の一言で確信する。颯がこの状況に気付いていることに。颯はあかりの口から発せられる言葉にも予想がついているかのように、半分諦めた表情を浮かべている。
 一瞬絆されそうになり、あかりはブルブルと頭を振って顔を引き締める。そして決意が覆らない内にと、颯にそのセリフを放った。
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