モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
「あの時の私は颯さんしか知らなかったし見ていなかった。だから別れる前に話してくれれば……。私が颯さんが自分で決断するよりも、二人の将来だから一緒に悩みたかったよ。私も颯さんを守りたかったのに……」
ダメだ、と思った時には遅かった。押し留めていた涙は溢れ出したら止まらない。
颯はあかりに手を伸ばして、すんでのところで引っ込めた。代わりに短く言葉を放つ。
「泣くな。困るだろうが」
そのセリフは、颯の胸で泣いたあの夜と全く同じ言葉で、あかりはますます泣けてくる。
「ったく……」
呆れたような口調なのに優しく聞こえるのは、気の所為ではない。颯はガサゴソと探した後、離席して何かを持ってきたようだ。
「ほら」
あかりに押し付けたのは、紙ナプキン。予想外のもの過ぎてあかりは思わずプッと笑った。
「仕方ねぇだろうが。ハンカチの持ち合わせがなかったんだから」
不貞腐れたように肩肘をつき、手のひらに顔を乗せた颯はそっぽを向く。
「別れ話した時は涙一つ零さなかったのに、今日泣くんじゃない。……ったく、泣いているお前を慰める役目はもう俺じゃないんだから。とっとと泣き止め」
ぶっきらぼうに言い放った颯の顔は、拗ねているように見えて、あかりはまた泣けてくるのだった。