モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています



 あかりの焦れったさに神様が背中を押したのだろう。あかりが動く日がやってきた。発端は結の「飲みに行かない?」の一言だった。
 珍しく定時に終わったあかりは、同じく日勤を終えた結とかち合わせたのだ。
 残業が多いのがデフォルトの二人が偶然とはいえ、いつもより早い時間に警察署を出たのは奇跡に近い。
 ふたつ返事で頷いたあかりを、結は行きたい店がある、と早足で電車まで引っ張っていったのだった。


「あっ……」

 サクッと飲んで近況報告をして。まだ飲み足りないから近くのバーに行くという結と別れて駅へ向かっていたあかりは、ふと気づく。

 (確か、理貴の会社ってこの辺じゃ……)

 理貴と連絡を取るかウダウダ迷っている間、気まぐれで彼の会社概要を眺めていたあかりの記憶にはバッチリ刻み込まれていた。
 念の為、携帯で場所を確認したあかりは、自分の記憶が確かだったことにホッとする。

 (行って……みるか)
 
 脳裏に浮かんだ行動を実行しようと思ったのはきっと、酒を飲んで気が大きくなっていたせいだ。決して理貴に会いたいわけでは無い。
 あかりは自身に言い聞かせるようにして、すぐ近くの理貴の会社へと足を向けたのだった。
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