モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
「わかっている。せっかく話題が落ち着いたところなのに勘違いされたら困るもんね」
サラリと告げたつもりだったが、声は想像以上に硬くなってしまった。理貴はあかりの機微に敏感だ。
あかりが「違うよ」といってほしいのも読み取れたはず。
だけど、理貴が放ったのは一言だけだった。
「そうだよ」
断言する理貴はあかりの予想の範疇外だった。驚いて息を呑んだあかりに、理貴は経営者でもあかりの前で見せる顔でもない表情で淡々と説明する。
「僕は経営者だ。会社と従業員を守らないといけない。だからこの忙しい時期に、くだらないことで部下を煩わせたくない。それに、あかりちゃんは僕にとって大切な人なんだ。たとえ想いが通じなくてもね。あかりちゃんをよく知らない人間に面白おかしく書かれたくない」
きっぱり言い切る理貴の強い口調に、あかりは先程までウダウダ悩んでいた自分を恥じた。
(ここは、理貴の戦場だ……)