モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
警察官になるのは小さい頃からの夢だった。それを叶えたけれど、夢と現実はやっぱり違う。
職業柄、平時にはいらない存在だ。町の人が警官に頼るのは何か問題が起きた時だけ。
簡単に処理できるケースばかりではない。精神的にクる事件の方が多いのだ。
休みだってろくに取れない上、転勤ばかりだし、給与だって勤務体系や仕事内容を考えると高給とはいえない職業だ。何かといえば報告が必須だし、大きな事件が駆り出される。近年多い自然災害の時は家族よりも都民を優先しなければならない。
警官に拘らなくても、もっとプライベートを充実させられる仕事は世の中に多く転がっている。
憧れの警察官試験に合格し、警察学校に入校してからちょうど十年になる。
悩む時期だ。年齢的にも、ライフプラン的にも。
分かっている。けれど颯と別れたばかりで同期の中でも違う道に進む者も現れて来ている中、あかりに迷いがないと嘘になる。
自分の能力も見えてきて、高卒で奉職したあかりは出世出来る階級も先が見えている。そもそも女性が増えてきているとはいえ、まだ男ばかりの職場だ。肉体的にずっと勤められるかどうかも分からない。
そこまで考えて、あかりは自嘲するように笑った。
別れは自分から切り出したのに、颯がいないことでこんなに不安定になっている自分が情けない。
そして。
「あかりちゃん、遅れてごめん!」
颯が居なくなってポッカリ空いた穴にごく自然に納まろうとする理貴を受け入れ始めている自分がいることに――うっすらとだが――あかりは気づき始めていたのだった。