モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
お互いが遠慮して、本音を隠した結果が今だ。きちんと時々で言葉を尽くして話し合えば、あかりの隣に立っているのは理貴ではなく、颯だったはずだ。
そんなこと今更告げたところでどうなるものではない。久保は緩く首を振ると、それ以上自身の考えは伝えない選択をする。その代わり、颯にハッパをかけることにした。
「まぁ、お前には女がいなくなっても刑事があるさ。なぁ、警部補殿?」
「今のはイヤミだろうが」
「バレた?」
久保は笑うと、颯の肩を二度三度叩く。
「まぁ、高卒同期の中で一番を突っ走っているんだ。せいぜい頑張ってくれ」
「お前はそろそろ巡査部長の試験くらい合格しろ」
颯に痛いところを突かれた久保は痛そうに胸を押さえる。
「簡単に言うなよ。難しいんだぞ、アレ」
「勉強すれば受かる」
「首席のお前とは違うんだよ、頭の出来が」
じゃれ合いのような会話は同じ釜の飯を食った同期ならではだ。
久保のセリフに颯は少しだけ頬を緩める。
「仕事に戻るぞ。いつまでサボってるんだか」
「山科非番だろ?」
「俺はな。お前は当直だろうが」
「大丈夫だよ。今日は何故か仕事が少な……」
その時、タイミングよく久保の携帯が鳴る。ゲッという表情を浮かべている久保で颯は全て察した。
「戻るぞ」
一瞬で同期から上司の顔に戻った颯は、久保を急き立てながら自身も階段を駆け上がる。
心の片隅に、いつでもあかりに理想と言われる警察官あり続けたいと想いを秘めて。