モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
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――本当に僕でいいの? 結婚してくれる?
自信なさげに理貴が聞いたのは、結婚式前日のことだ。
明日の式に備えて二人で前泊をしていて、さぁ寝るぞというタイミングでベッドの上に正座して問いかける理貴は、例えるなら捨てられた子犬みたいで、あかりは込み上げてくる笑いを抑えるのに必死になる。
「……なんで?」
笑いを飲み込んだあかりは震える声で訊ねる。理貴はあかりの声を別の意味に取ったようだ。
「僕が……無理やり進めたじゃない、この話。だから今ならまだキャンセルできるよってこと」
「何でよ?」
さすがに可笑しいと気付いたあかりは半分ベッドに横たえた体を起こして、自らも正座になると理貴に問いただす。
理貴は、なにか迷うように揺れる瞳であかりに告げる。
「自覚はあるんだ。あかりちゃんの気持ちがまだそこまで高まっていないのに、強引に結婚まで漕ぎ着けた自覚が」
「理貴」
あかりは呼びかけるが、理貴は自嘲するような笑みを浮かべる。