モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています


 同学年ではないあかりの記憶の中にいる理貴は、祖父が教えていた道場にいる姿がほとんどを占めている。
 めったに祖父が筋がいいと褒めるくらいだった理貴の立ち姿は、今振り返ってみても凛としていたのを覚えている。
 だから理貴が剣道を辞めずに続けていたことに嬉しくなる。
「あかりちゃんは今でもしているんでしょ」
「うん。仕事に必須だからね。でも家出てるからする機会はグッと減ったよ」
「福田先生は変わりない?」
「全然変わらない。相変わらず竹刀振り回しているよ」
 容易にその姿を想像できたのか、理貴は吹き出す。
「福田先生、怖かったなー。部活の指導が優しく感じたくらい」
「あの頃は容赦なかったもんね。今は時代もあるし、大分丸くはなっているけれど。……それでも生徒には厳しいと言われてるみたいだけどね」
「そうなんだ。めっちゃ厳しかったからたまに褒めてくれた時はすごく嬉しかったんだ。また道場にお邪魔したいな」
 祖父の道場に通っていた頃は、楽しいことばかりじゃなかったはずなのに、懐かしむように昔住んでいた場所を訪れようと話している理貴を見ると、あの町での記憶がイヤなものばかりじゃないのだと安心する。
「いつでもおいでよ。祖父も喜ぶよ」
 あかりの言葉に理貴は頷く。その様子を見て、あかりは少し迷った。
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