モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
三分の二ほどワインが残ったグラスを置いたあかりに、ウエイターがそっと近づいてきて水のグラスを運んでくる。
店の気遣いか、それとも理貴か。
どちらかわからないが有り難くテーブルに運ばれたばかりのチェイサーを口に含んだ。
冷えた水が火照った体をスッと冷ましてくれる。
と、同時に思考も落ち着きを取り戻したようだ。
気を取り直してあかりは生ハムのサラダを口に運んでいた理貴に話しかけた。
「会うの、どれくらいぶりだっけ?」
「きちんと会ったのはあかりちゃんが就職するちょっと前に会ったきりだよ」
間髪おかずに理貴が答える。
少しだけ含みがあるように聞こえたが、あかりはサラリと聞き流した。
あかりとの関係は理貴の引っ越しで途切れたけれど、同級生の幸人とは変わらずに交流があったから近況は聞かずとも知っていた。
逆にあかりのことも理貴は聞いているだろう。
あかりが就職した頃といえば、もう十年も前だ。
それだけ付き合いがなかったあかりを呼び出したのは……。
「そっかぁ。ずいぶん前になるんだね。……今更どうして連絡くれたの?」
職業柄、どうしても探ってしまう。理貴相手にまどろっこしい聞き方をしても仕方ないから、直球で訊ねる。