モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています
「それで……」
「別れたよ。今もオレは納得してないけどな」
あかりが再度言う前に颯が口を開いた。
「「わかった」って言ってたじゃん!……言ってたじゃないですか」
言い直したのはわざとだ。颯もそれをわかっているからか、わずかに渋い顔をする。
「「あかりの言い分はわかった」と言ったんだ。別れを納得していたわけじゃない」
「なんですか、それ」
颯の言い訳は、あかりが生活安全課で受けるDV男と似た空気を感じる。
まさか、同じ穴のムジナか、とドン引きしているあかりを見て、颯は「タンマ」と手を上げる。
「一から話すから。とりあえず聞いてくれ」
颯の進言にあかりはしぶしぶ頷いた。あかりだって上司の指示で来ているのだ。きちんと颯と話して報告する義務がある。
頷いたあかりを見て幾分ホッとした様子の颯は、追加のビールとツマミを頼む。
さり気なくあかりの好きなエイヒレをオーダーしているところが憎い。
以前は嬉しかったのに、別れた今となっては複雑だ。
それでも。