モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています


 落ち着かせるために一つ呼吸を置いたけれど、湧き上がるのは怒りだった。

(なによ、今更……!)

 抑えることができなかった。感情のままに出てきた言葉をあかりはダイレクトに颯にぶつける。

「二年も付き合っていたのに一切そんな話なかったじゃないですか!」 
 どれだけ悩んで、考えた末に選んだ道だと思っているのか。それを簡単にひっくり返す颯が許せなかった。
 同じセリフを、二ヶ月前はあれだけ切望していたのに、今胸に広がっているのは、憤りと戸惑いなのだ。
 なのに、颯は淡々と言い放つ。

「うん、言わなかった」
 その言い方にあかりは毒気が抜かれた。
 あかりの気持ちが伝わっていないわけではない。受け止めた上でその対応だったのだ。
 颯はあかりを真っ直ぐに受け止めた。自分が筋の通らないことは颯も痛いくらい理解しているのだろう。
 今更と言われる覚悟を持って、自身の想いをぶつけてくる颯は初めて見る顔をしていて、あかりは戸惑ってしまう。
 怒りはあっという間に霧散した。あかりは尻すぼみになった感情を持て余しながら、口の中でモゴモゴと呟く。
「私から結婚しよって言った時にも……考えてはいないって」
「そうだな」
「なのに今さら結婚しようなんて言うなんて……」
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