モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています

 今簡単に言えるセリフならば、二ヶ月前に聞きたかったのに。
 あかりは無言で颯を睨みつけたが、先程の勢いは既になかった。

 色んな感情を綯い交ぜにして混乱しているあかりの視線を真正面から受け止めた颯は、先走った気持ちを落ち着かせるように加熱式タバコを取り出す。
 同時にあかりは口を噤んだ。
 
 颯はこの一本吸い終わるまでは口を開かない。大事な話をするときの颯の癖なのだ。
 手持ち無沙汰になったあかりは、冷めてしまったエイヒレをチビチビ口に含む。
 硬くなったエイヒレは、それでもビールとよく合う。
 あかりが一杯飲み干すのと、颯が一本吸い終わるのはほぼ同時だった。

「辞めれる? 仕事を」
「なんでいきなりそんな話?」
「いいから最後まで聞けって」
 唐突に始まった話題にあかりはついていけない。そんなあかりを颯は押し留めて話し始める。
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