失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
「帰りに偶然、前に付き合っていた人に会って……」

 おそるおそる告白した。そして光輝さんの反応を待たずに続ける。

「別になにかされたってわけじゃないんです。ただ、あまりにも無神経で失礼なことを言われたから、腹が立っちゃって……。それで、光希に愚痴を聞いてもらっていました」

 わざとおどけて言ってみたものの光輝さんの表情は厳しかった。彼の顔を直視できず、視線を落とす。今になって血の気が引いてきた。

 事実とはいえやっぱり言うべきじゃなかったのかもしれない。私だって光輝さんが付き合っていた彼女の話をしたら、絶対に平静でいられない。

「す、すみません。私――」

 謝罪の言葉を口にしようとした瞬間、光輝さんに抱きしめられる。

「なにを言われたのかはわからないが、もう関係のない男の言葉で、未可子が傷つく必要はない」

 聞こえてきたのは、想像以上に優しくて寄り添う声だった。胸と同時に目の奥もじんわり熱くなる。

「だ、大丈夫です。傷ついていません。私は異性を見る目がないなーって痛感しただけです」

 震える声で強がりつつ無理やり笑顔をつくる。光輝さんに心配をかけるわけにはいかない。

「それは俺も含まれるのか?」

 ところが、ふっと口角を上げて光輝さんが聞いてきた。予想外の切り返しに、私は目を丸くする。

「光輝さんは別です!」

 ああ、私。また失礼なことを言ってしまった。
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