失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
「それは……誰と比べているんだ?」

 口角は上がっているのに目が笑っていない。彼の問いかけに、自分の失言に気づく。

「く、比べていません。一般的にって話です」

「へぇ」

「ほ、本当です」

 取りようによっては、元彼と比較したと受け取られても無理はない。

 まったくそんなつもりはなかったし、あまりのスマートさに戸惑ったが、それは私の経験は関係ない。

 けれど私だって、光輝さんからキスの後に『未可子は背が高いな』って言われたら、絶対にモヤモヤするのに。

 なんでこう私は恋愛になるとまったくだめなんだろう。

 ちらりと光輝さんをうかがうと、顎先に手をかけられ親指の腹でゆっくりと下唇をなぞられる。

 謝罪すべきなのに言葉が出ない。鼓動が速くなり、緊張で目が潤んでいく。

 改めて説明しようとして彼の名前を呼ぼうとした。

「光輝さ――んっ……」

 再び唇が重ねられ、先ほどよりも性急な口づけに、恋焦がれていた想いがあふれそうになる。弱々しく口を開くと彼の厚い舌がすべり込まされ、迷いつつ従順な姿勢を見せようと私から舌を差し出す。

 光輝さんだけだってどうしたら伝わるのだろう。少しは私の想いが届くかな。

 光輝さんは、どうなのかな? 少しは私のことを……。
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