失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
「やっ……」

「香りだけじゃなくて未可子自身が甘いんだな」

 おかしそうにささやかれ、その吐息さえ刺激になって腰が跳ねる。続けてぬるついた舌の感触に、反射的に逃げ出したい衝動に駆られた。

 けれどそれを光輝さんは許してくれない。ざらついた舌が皮膚の上をすべり、声にならない悲鳴が漏れそうになる。

 そんな私の反応を楽しむかのように、彼は時折唇も使って、私の肌を懐柔していく。その間、彼の手は私の胸に伸ばされ、優しくでも焦らすように触れていた。

「や、だ……あっ」

 羞恥と快感で息が詰まりそうだ。与えられる刺激に、触れられていない下腹部に熱がこもっていく。

「嫌じゃないだろ、本当は」

 光輝さんは意地悪そうにつぶやいた。その通りで、彼に触れられて嫌な気持ちなどひとつもない。むしろ、もっとしてほしいと本当は願っている。でも――。

「さっきから……ずっと、私、ばかりで……」

 切れ切れに訴えかけると光輝さんは手を止め、私をうかがった。彼と目が合った瞬間、感情があふれ、涙がこぼれそうになる。

「光輝さんは余裕たっぷりで……それなのに私……私ばっかりが……」

 好きなの。

 埋まらない差が苦しくて切ない。翻弄されて彼の手のひらの上で転がされる。対等になんてなれないんだって言われているみたいだ。

 元彼にはこんな感情抱かなかったのに、光輝さん相手だと、どんどんワガママになって欲が出てきてしまう。

 あきれられたくない。嫌われたくないのに。

 目尻から涙がこぼれ落ちて耳を濡らす。冷たさに眉をひそめた。
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