失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
「大丈夫です。昔から頑丈なのが取り柄なので!」

 ちょっとやそっとでは風邪をひいたためしがない。光輝さんは軽く微笑んだ後、コーヒーの入ったカップを机に置いた。

「未可子に大事な話があるんだ」

 彼の真剣な声色に心臓がドキッとする。

「な、なんでしょうか?」

 極力不自然にならないように答える。けれど、内心ではなにを告げられるのかと不安が募っていく。

「急なんだが、どうやらマンションで大掛かりな工事があるらしい」

「え?」

 身構えていた内容はまったくの予想外のものだった。光輝さんはふうっと大きく息を吐く。

「さっき電話があって。全部ではないそうだがこのフロアはしばらく使えないそうなんだ。実家に……と思ったが、職場からそれなりの距離もあるし、今は妹さんがいるだろう?」

「そう、ですね」

 実家というのは私の方を指すらしい。通えないことはないが、それなりに時間もかかるし、不便だ。けれど彼の話の進め方になんとなく違和感を覚える。

「だから未可子の職場近くでウィークリーマンションを押さえておいた」

「え、でも私の職場近くだと光輝さんは?」

「俺は別で取ってある」

 間髪をいれない返事に戸惑うのは私だけで、彼に迷いは見られない。

 それでも、先ほどみたいに納得はできなかった。

「……一緒の場所、という選択肢はないんですか?」

 おそるおそる尋ねる。ウィークリーとなると、数日では済まないのか。どれくらい光輝さんと離れて暮らさないとならないのだろう。
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