失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
「お姉ちゃん、久しぶり」

 実家に顔を出すと、可南子が機嫌よく出迎えてくれた。

 以前会ったときは、まだつわりがあって顔色が悪かったが、すっかり元気になっていて安堵する。

「可南子。つわり、治まってよかったね」

「今は逆に、体重増えすぎないようにって病院で言われているの。ついつい食欲が爆発しちゃって……」

 いたずらっ子みたいな笑みを浮かべる可南子は、幸せそうだ。

「性別、わかったの?」

「うん。男の子だって」

 私たちはふたり姉妹なので、男の子がどんな感じなのかあまり想像がつかない。けれど男の子の母親をする可南子は簡単に想像できた。

 私はおずおずと切り出す。

「大林さんの息子さんとの結婚もなくなったし、本当に相手に伝えなくていいの?」

 可南子は違うと言っていたけれど、おなかの子どもである恋人と別れたのは、大林さんの息子さんと結婚があったからだ。

 私の質問に、可南子は目を伏せた。

「彼は今外国にいるし……。ずっと夢のためにがんばっているのを知っているから、邪魔したくないの。それに、お世辞にも綺麗な別れ方をしなかったから……彼も早く私を忘れたいと思うんだ」

 可南子の口調から、まだ彼を想っているのが伝わる。けれど、彼女自身が決めたことだ。なら姉としては、全力で支えるしかできない。

 可南子はおなかに視線を注ぐ。

「この子には、すごく申し訳ないと思っている……。お父さんやお母さん、お姉ちゃんにも心配をかけて、ごめんね」

「謝るのは、なし! お父さん、お母さん、待望の初孫だよ? 絶対に喜ぶし溺愛するのが今から、目に浮かぶもの。可南子はむしろ親孝行だよ!」

 早口でまくし立てると、可南子がふっと噴き出した。
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