失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
「心配しなくていい、かすっただけだ」
心配しないわけがない。滴り落ちる血の量から、笑って済ませられるレベルではないのは明白だ。
バッグからハンカチを取り出し、彼に渡すと光輝さんはそれでぎゅっと腕を押さえた。スーツのジャケットまで血で染みていて、これはかすったというより刺されたと言った方がいいのではないか。
不安が広がって手が震える。直接傷口にあてるべきだと思ったが、上着を脱がす余裕も無防備になるわけにはいかない。彼を傷つけた張本人がそこにいるのだ。
そのときナイフが地面に落とされた。正確にはすべり落ちたようだった。切っ先があたったのか、キンッと硬い音が響く。
「わ、私は悪くありませんから。悪いのは、結婚を承諾しない光輝さんです」
こんな事態になっても、千恵さんから出るのは自己弁護と他責思考だ。言い返す気にもなれない。しかしナイフを落としたところを見ると、彼女も多少、うろたえているのか。
光輝さんが千恵さんを見すえた。
「今まではどうだったか知りませんが、今回も同じとは限りません。お父上の立場も、警察庁内部の人間も変わっていっていますから」
そのとき警察官二名ほどが「大丈夫ですか?」と声をかけながら路地裏に入ってきた。
光輝さんがけがをしている旨を私が伝えると救急車を呼ぶ流れになり、光輝さんはその必要はないと言いきったが、私は呼んでもらうのを譲らなかった。
ここに来る前に、私を襲った男性は身柄を拘束されたと報告され、彼が使っていたナイフが落ちている箇所を指さす。指紋や証拠として必要になるかもしれない。
「一度、移動しましょう。誘導します」
ぞろぞろと野次馬も集まってきて、ひとまず警察官の指示に従い、私は光輝さんに付き添って病院に行くことにした。
千恵さんにも警察官があれこれ聞いていたが、彼女がどうなるのかはわからない。今は彼女よりも、光輝さんのけがの具合の方が気になって仕方がなかった。
心配しないわけがない。滴り落ちる血の量から、笑って済ませられるレベルではないのは明白だ。
バッグからハンカチを取り出し、彼に渡すと光輝さんはそれでぎゅっと腕を押さえた。スーツのジャケットまで血で染みていて、これはかすったというより刺されたと言った方がいいのではないか。
不安が広がって手が震える。直接傷口にあてるべきだと思ったが、上着を脱がす余裕も無防備になるわけにはいかない。彼を傷つけた張本人がそこにいるのだ。
そのときナイフが地面に落とされた。正確にはすべり落ちたようだった。切っ先があたったのか、キンッと硬い音が響く。
「わ、私は悪くありませんから。悪いのは、結婚を承諾しない光輝さんです」
こんな事態になっても、千恵さんから出るのは自己弁護と他責思考だ。言い返す気にもなれない。しかしナイフを落としたところを見ると、彼女も多少、うろたえているのか。
光輝さんが千恵さんを見すえた。
「今まではどうだったか知りませんが、今回も同じとは限りません。お父上の立場も、警察庁内部の人間も変わっていっていますから」
そのとき警察官二名ほどが「大丈夫ですか?」と声をかけながら路地裏に入ってきた。
光輝さんがけがをしている旨を私が伝えると救急車を呼ぶ流れになり、光輝さんはその必要はないと言いきったが、私は呼んでもらうのを譲らなかった。
ここに来る前に、私を襲った男性は身柄を拘束されたと報告され、彼が使っていたナイフが落ちている箇所を指さす。指紋や証拠として必要になるかもしれない。
「一度、移動しましょう。誘導します」
ぞろぞろと野次馬も集まってきて、ひとまず警察官の指示に従い、私は光輝さんに付き添って病院に行くことにした。
千恵さんにも警察官があれこれ聞いていたが、彼女がどうなるのかはわからない。今は彼女よりも、光輝さんのけがの具合の方が気になって仕方がなかった。