失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
『……万が一なにかあったら、光輝さんを信じた自分の見る目のなさを呪うだけです』

 そうだ。なにがあっても、彼がなにを考えていても、私は光輝さんを信じるって決めたんだ。

 しばらくして、光輝さんの処置が終わったと告げられ、長山さんとともに顔を出す。光輝さんは左上腕部に包帯を巻かれていた。顔色があまりよくないのは、出血したせいで貧血なのもあるのかもしれない。

「傷は深くないみたいでよかったな」

 なにか言わないと、と思うのに言葉が出ず、先に長山さんが切り出した。

「ええ。神経にも触っていませんし、とくに治療が必要なわけではなく、あとはもう日にち薬です」

「働きすぎだったから、ちょっとは休めってことかもしれないな。奥さんにしっかり面倒を見てもらったらいい」

 まさかこちらに話題を振られるとは思ってもおらず、急ではあったが長山さんからのパスをありがたくいただき、光輝さんと目を合わせ、頭を下げた。

「光輝さん、私のせいでごめんなさい」

「未可子のせいじゃない。俺こそ未可子を危ない目に遭わせて悪かった」

「光輝さんが謝る必要はないですよ。けががよくなるまで、私にできることはなんでもしますから!」

 テンポよくやり取りし、最後はつい弾みで言ってしまった。気恥ずかしさに一度視線を逸らす。

「だから……早くよくなってください」

「ああ」

 今回の事件について長山さんが光輝さんと話したいというので、彼に場を譲り私は部屋を出た。少しでも光輝さんと話せて、ホッとした。

 長山さんと光輝さんの話が終わった後、私は病室に顔を出し、彼の代わりに荷物をまとめる。帰りはタクシーを使うのがいいだろう。
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