失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 外に出ると、辺りはすっかり暗く、それでもセミの鳴き声はまだ聞こえる。まるで自分たちはここにいるのだと主張しているようだった。帰ったらシャワーを浴びたい。

 光輝さんは、シャワーを浴びるのもひと苦労だよね? タクシー乗り場まで歩きながら彼をうかがう。そもそも、光輝さんはひとりで大丈夫だろうか。

「今日からマンションに戻って一緒に生活するので、かまわないか?」

 私の顔色を読んだかのように光輝さんが聞いてきたので、目を見開く。

「も、もちろんです。その腕だと、ひとりではいろいろ大変ですものね」

 あれ? そういえば工事は終わったのだろうか?

 尋ねようとしたら、光輝さんが先に続けた。

「そういう意味じゃない。未可子と離れて暮らすのは、終わりにしたいんだ」

 てっきり別々に生活するのは光輝さんの希望だと思っていたので、少しだけ驚く。

「気づいているかもしれないが、仕事の都合で未可子を俺のそばに置いておくわけにはいかなくて、マンションの工事だと言って別居を提案したんだ」

「そう、だったんですね」

 今日の千恵さんとの一件で薄々とそんな気はしていた。逆にそれまで、まったく疑っていなかった自分が情けない。

「悪かった。竹中局長の娘については、仕事での案件もあって接触していたんだが、あそこまで個人的な感情で未可子を巻き込むとは予測できていなかった。俺の判断ミスで未可子をあんな危険な目にさらして……」

 悔しそうな光輝さんに、即座にフォローを入れる。
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