失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 自己犠牲とは思わない。幼い頃から寂しい気持ちを表せられなかったのは、平気だったわけではなく嫌われたくないだけだ。

 聞き分けのいいふりをして、強がって、極力相手にとっての理想でいたかった。

 高校生のときもそう。捨てられているチョコレートを見て、彼に詰め寄る勇気はなかった。さらにうっとうしいと思われるのが、これ以上嫌われるのが怖かったから。

 結婚してからも同じ。ほどよい距離感で彼に求められるままに妻役を果たしていたらいい。それを彼も望んでいる。

 ずっと臆病だっただけ。そうやって自分を守ってきた。でも、もう限界だ。

「私……光輝さんが好きです」

 傷つきたくなくて一線引いているつもりだったけれど、光輝さんが優しくて、どんどんワガママになっていく。彼の気持ちも、彼との未来も欲しくなる。

 同時に、それが彼の負担になる怖さをこれ以上、抱えきれなくなった。

 はっきりさせよう。彼がこの結婚を一時的なものとみなしているなら、私を嫌いではなくても好きではないのなら、終わらせてほしい。

 どんな結果になっても、彼に対する想いだけは本物だ。自分の気持ちを大事にできるのは、自分しかいない。真っすぐに目標に向かって努力する光輝さんに教えられた。

 光輝さんはなにも言わない。彼はなんて答えるの? 私を傷つけないために言葉を必死で選んでいるのかな?
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