失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 彼の顔が見られずうつむいていると、次の瞬間、正面から光輝さんに抱きしめられた。回された腕は右手だけだが、いつもよりしっかりと力強い。

「感情を読んだり嘘を見抜いたりするのは、わりと得意な方だと思っている」

 ぽつりとつぶやかれた内容は、意外なものだった。

「でも……未可子の気持ちだけはずっと読めなかった」

 ちらりと光輝さんを上目遣いにうかがうと、同じくこちらを見ていた彼と目が合う。

「こんな近くにいて結婚もしているのにもかかわらずにだ。いつも余計な私情を挟んで、自分の願望なのか正確に分析できない。今もそうなんだ」

 そう言うと彼は顔を近づけ、こつんと額を重ねてきた。

「嘘じゃない、信じていいんだな?」

 射貫くような眼差しに、思考が停止する。ややあって小さくうなずくと、彼は顔を綻ばせた。

「それは夢みたいだ」

 光輝さんの表情を目にした瞬間、涙の膜に目が覆われ視界が滲む。

「なん、で? だって光輝さん、私のこと好きじゃないのに……」

 涙が勝手にあふれ、あとは声にならない。わからない。彼の言葉をどう受け止めたらいいの?

 私の切り返しに、光輝さんは意表を突かれた面持ちになる。しかし私は堰を切ったように続けていく。
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