失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 そこでなんとなく察する。その光輝さんに告白しようとした女子か、ふたりをくっつけようとしたゼミ生の誰かが、光輝さんの持っていたチョコレートを邪魔だと処分したのかもしれない。

「実はあのとき光希の調子が悪くて、一緒に勉強する話はなくなったんです。そうしたら、帰りに時間つぶしにふらっと寄った公園で、偶然ゴミ箱に捨てられている私のチョコレートを見つけて……」

 さらにその後、光輝さんが女性と並んで歩いているのを目撃し、彼が処分したのだと思い込んでしまった。

「チョコレートは、未可子が自分で持って帰ったのか」

「はい。父が丁寧に作ったチョコレートをそのままにしておけなくて……」

 光輝さんいわく、ゼミ生一人ひとりに話を聞き、思いつく限りの場所を必死で捜したらしい。完全にすれ違っていた。

 光輝さんは私をぎゅっと抱きしめ直す。

「悪かった。未可子が勘違いするのも無理はない。あれから俺自身、忙しくなったのもあるが、会っても未可子がやけによそよそしく接するから、ほかに好きな男ができたのか、嫌われているのだと思っていた」

「私も、光輝さんには内心で嫌われていると思っていたから……」

 バーに彼が迎えに来て再会するまで、お互い誤解したまま距離ができていた。およそ十年経って知った事実に動揺しつつも安堵する。

「光輝さん、優しいですね。妹の親友からもらったチョコレートを、捨てるどころかわざわざ捜してくださっていたなんて」

 うれしく思いながらも申し訳ない気持ちになる。私も傷ついたけれど、私が持って帰ったせいで、彼にもずっと気に病ませていたなんて想像もしていなかった。
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