失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
「光希の親友なのは関係ない。未可子からもらったものだから、うれしかったし必死で捜したんだ」

「え?」

 思わず声が漏れる。今ならまだいざ知れず、あの頃に彼がそんなふうに思っていたなんて驚きが隠せない。

「俺が警察庁に入庁してこの世界で上を目指そうと決めたのは、未可子のおかげだからな」

 穏やかな表情で、彼は噛みしめるように告げた。話が読めずにいると、光輝さんは笑みを崩さずに続ける。

「未可子が、変えるためには上に行くしかないって言って、目が覚めたんだ」

 なんのことなのか、と考えてすぐに答えにたどりつく。光希が部活に来られなくなったとき、私が部長になってやり方を変えると言ったときだ。

『苦労するかもしれないですし、なにか大きく変えられることはないかもしれないけれど……変えるためには上の立場に行くしかないから』

「俺は経営者の祖父や警察官の父を見てきて、昔からのやり方を変えるのがいかに大変なのかわかっていたつもりだ。変えるより決まった枠組の中で生きる方が楽だし、合わなければそこに固執する必要もない。でも、苦労してでも上の立場になってなにかを変えようとする未可子の姿は、なかなかに衝撃的だったし、まぶしかった」

『なにもせずに変わるのを待つくらいなら、自分にできることをがんばりたいんです』

 部活動と警察の世界は比べ物にならないほど規模も厳しさも違うし、なによりあのときは若さゆえの一途さもあった。
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