恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
今朝の記事のせいか、周囲を行きかう人々がこちらに視線を向けていた。

眼前の五十嵐さんが肩を竦めて、大きく息を吐いた。

匡を真っすぐ見つめる目には明らかに落胆の色が浮かんでいた。


「……残念ながら、引き下がるしかなさそうですね」


「当然です」


「長谷部さん、私は本気であなたを手に入れたかった。あなたのように魅力的な女性に出会ったのは初めてでした」


「申し訳ございません。私は五十嵐さんを選べません」


この返答が適切かわからないが、自分の気持ちを正直に伝えた。


「妹にはあきらめるよう諭します。記事の件は少々やりすぎでした。迷惑をかけて申し訳なかった」


どうやら五十嵐さんは記事の件を事前に知らされていなかったようだ。

とはいえ、兄妹なので同罪だと彼は自嘲気味につぶやいた。


「失礼します」


素っ気なく返答した匡は、私の腰を解放し、左手に指を絡めて踵を返す。

周囲から投げかけられる好奇の視線にいたたまれず、手をほどこうすればさらに力が込められる。


「なんでほどこうとする?」


斜め上から降ってくる声は明らかにイラ立っている。


「皆が見てるから……」


「誰か見られたら困る相手がいるのか?」


「……なんの話?」


「どうしてあの男に言い寄られているのを言わなかった?」


足を止め、匡が私と向き合う。
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