恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
「私も、話したい。さっきは……酷い言い方をしてごめんなさい」


「眞玖が謝る必要はない。悪いのは、なにも理解していなかった俺だ」


クシャリと整った容貌を歪めた匡が、首を横に振る。


「ここは会社だし、俺の自宅でゆっくり話したいんだけどいい?」


どこか遠慮がちな物言いにうなずく。

会社の応接室で喧嘩はさすがに心苦しい。


「専務に連絡するから、ちょっと待って」


「俺がさっき話して、礼も伝えたから大丈夫」


一緒に帰ろうと促され、再びうなずく。


会社内ではお互いに無言だったが、通りに出た途端、匡が口を開いた。


「……傷つけて本当に悪かった」


「ううん。私も、感情的になってごめんなさい」


「眞玖は悪くない。俺が眞玖ねか気持ちや不安を理解していなかった」


「私だって匡をわかっていなかったの。お互い様よ」


答える私に、匡が眦を下げる。

そっと大きな手で私の手を繋ぎ、歩き出す。

タイミングよく目の前を通ったタクシーを呼び止めて、乗車した。

車内での私たちは再び無言だったが、繋いだ手は離されなかった。

私が口を挟む間もなく、タクシーの支払いを済ませた彼に促され、降車した。

伝わる体温の温かさと時折私を見つめる匡の視線に、これは夢ではないと実感する。

まだ私が彼に寄り添えるチャンスがあるのかと淡い期待を抱いてしまいそうになる。
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