恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
「今回の件で五十嵐家との取引は白紙に戻るだろう。あの記事については訂正記事を出すよう要求している。拒否した場合は訴訟も視野に入れている旨も伝えてある」


淡々と話す匡の目はまだ怒りをたたえている。

諸々のそれはきっと、五十嵐さんにはつらい制裁だろう。


「……甘い考えなんだろうけど、私自身にはなんの被害もなかったし、あまり追い込まないであげてほしい」


水族館で会ったときの五十嵐さんの目は恋する女性のものだった。

彼女の行いをすべて正しいとは思えない。

自分の不甲斐なさも理解している。

けれど、もし匡との関係があのまま拗れていたらと考えると簡単には許せそうにない。

それでも同じ人を好きになった身としては、その切なさ、焦燥感は痛いほどにわかる。

恋焦がれる人を手に入れたくて必死だったのだろう。

ただしその方法は褒められたものではなかったし、方向性を間違えていた。


「本当に眞玖はお人好しだな。最終的な判断は親父に任せている。眞玖を傷つけたのは許せないし厳しい対応をしたい……でも眞玖は望まないんだろ?」


うなずく私に、匡が眉間に皺を寄せる。

五十嵐さんに対峙した際の彼は、散々厳しい言葉を投げかけたらしい。


「……気は進まないが、あまり大事にはならないよう対処する。ただし訂正記事と眞玖を傷つけた謝罪、今後俺達に接触しない件については譲らない」


「ありがとう。もうひとつ教えてほしいのだけど、どうしてアメリカにいる間、私と連絡をとろうとしなかったの?」


気になっていた点をここぞとばかりに尋ねる。

すると匡は腰にまわした手に少し力を込め、私を自分のほうに軽く引き寄せた。
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