恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
「なんで……」


「今まで、どれだけ近くで見てきたと思ってる?」


真剣な眼差しが真っすぐに私を射抜く。


どうして知ってるの?


蘭以外にそんな姿は見せていないし、そもそも彼とは社会人になってからそれほど顔を合わせていない。


「……眞玖を置いていくのだけが気がかりだ」


まるで大事な恋人に話しかけているかのような甘い声に、戸惑う。


「……心配不要よ。そんな台詞は可愛い彼女にでも伝えてあげて」


「素直じゃないな」


「余計なお世話」


私の返答に藤宮くんはニッと口角を上げる。
 
やはりさっきまでの会話は私をからかっていただけだろう。

もしくは気遣ってくれたのか。


「気が進まないが、宰に頼んでおく。眞玖はしっかりしているようで、していないから」


「ちょっと、失礼じゃない?」


思わず眉間に皺を寄せた私の頭を、片眉を上げた彼が軽く撫でた。

同い年なのに、なぜかあやされている気になるのはなぜだろう。


「もうこんな時間か、そろそろ帰ろう」


腕時計に視線を落としてつぶやく。


「あ、うん」


つられて腕時計を見ると午後十一時を過ぎていた。

そろそろ終電も気になる時間帯だ。

わかっているのに、なぜかこのまま離れるのを寂しく感じた。
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