恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
しばらく会えなくなるから、感傷的な気分になっているのだろうか。

餞に、と無理やり私が代金を支払った。

律義にお礼を告げつつもそんなつもりじゃない、とどこか拗ねたような表情を浮かべている彼に「じゃあ出世払いで将来なにか贈ってよ」と軽口を返す。

近くの駅まで肩を並べて夜の街を歩く。

こんな時間もこれからはなくなるのだと思うと、胸の奥が酷く軋んだ。

やはり今夜の私は少しおかしい。

眼前に駅が見えてきた。


「出発前の忙しい時間にごめんね。会えて嬉しかった」


胸の奥からこみ上げる熱い気持ちを誤魔化すように、早口で告げる。

自分の感情の変化がよくわからない。


「いや、俺が出発前に会いたかったから」


「またそんな言い方して。過剰サービスは不要だってば」


「本心だ」


「ハイハイ、ありがとう」


ひらひらとおざなりに左手を振った途端、手首をグッと掴まれ、胸元に強引に引き寄せられた。

ギュッと広い胸に抱きしめられ、ふわりと彼の香水の香りが私を包み込む。


「ふ、藤宮くん?」


突然の行為に理解が追いつかない。
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