恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
「眞玖」


背後から名前を呼ばれ、ビクリと肩が跳ねる。

思わず振り向きそうになり、きっと同名の人がほかにいるのね、と思い直す。

だって、匡の到着時刻まであと十分くらいある。


「眞玖、こっちを向いて」


甘さを含んだ低い声にハッとする。


……まさか、噓でしょう?


「婚約者の声を一週間で忘れた?」


カツン、と近くで響いた靴の音に、おずおずと後ろを向く。


「ただいま、眞玖」


ふわりと頬を緩める男性は、私の婚約者だった。


「匡……? なんで、飛行機……」


「ひとつ早い便に変更した」


「それなら、そうと教えてよ」


思わず言い返した私を、長い両腕を伸ばした匡が笑いながら強く抱きしめた。

普段とは少し違う香りに、離れていた時間を感じる。

スーツ越しの体温、少し早めの鼓動を感じて胸が温かな気持ちでいっぱいになる。


「会いたかった。迎えに来てくれてありがとう」


「ううん、私も少しでも早く会いたかったから」


まだ恥ずかしさや抵抗もあるけれど、最近は自分の感情を少しずつ素直に伝えるよう心がけている。

自分の気持ちを素直に伝える大切さを彼から学んだ。

彼のストレートな愛情表現に戸惑いつつも嬉しさを感じるように、彼にも私と過ごす日々を幸せだと思ってもらいたい。

ただ匡は「言えずに悶々と悩んでいる姿も可愛い」とたまに私を困らせる。
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