恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
私の髪を撫でた匡が、額にそっとキスをした。


「おかえりなさい」


「ただいま」


白い歯を見せた匡は、ゆっくりと体を離して私の手を取り、指を絡める。


「ごめんなさい、ずいぶん待たせたよね」


「いや、済ませたい用事があったから」


「匡、荷物ってそれだけ?」


彼のすぐ近くには小ぶりのキャリーバッグがひとつあるのみだ。


「ほかの荷物は秘書が持って帰ってくれた」


「え、もう帰られてるの?」


時差もあり疲れている匡をそんなに待たせたのか、と申し訳ない気持ちになる。


「ああ。元々一緒には戻らない予定だったんだ」


手を引かれて人気の少ない、ロビーの一角に向かう。

大きな窓からは僅かに滑走路が見える。


「ここって……」


「そう、俺が渡米前に見送ってもらった場所」


「……懐かしいね」


あの日の胸の痛みと切なさが苦い記憶として蘇る。

好きなのに、怖くて、どうしても気持ちを言い出せず、背中を見送るのが精一杯だった。

今、こうして匡と手を繋いで立っていられるのが奇跡のようだ。
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