恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
「眞玖」


匡がそっと私の指をほどいて、正面に向き直った。


「覚悟、決まったか?」


「え?」


「あの日、言っただろ? 覚悟しろよって」


その意味がわかった途端、鼓動が早鐘を打ち、耳が熱くなる。


「き、決まったけど……」


綺麗な二重の目が、至近距離から私を覗き込む。

匡と婚約した私は峰岡飲料の年内退職を決めた。

本当にいいのかと匡は何度も確認してくれた。

以前あれだけ積極的に自社へ私を誘った人とは思えないくらいに。

峰岡専務と匡は親友同士だが、婚約者がライバル企業で勤務し続けているのはきっと世間的には受け入れられにくいだろうと私なりに考え、納得した末の決断だ。

峰岡飲料の仕事は好きだし、取り組みたい仕事も今後あるかもしれない。

でも私は好きな人と同じ場所にいたい。

彼の置かれている状況を理解し、少しでも手助けしていきたい。

できるなら藤宮商事に入社して仕事をしたいと彼には伝えてある。

婚約者といえど入社テストは受けるつもりだ。

足手まといにはなりたくない。

匡は満面の笑みで了承してくれた。

ちなみにこの件は専務にも伝えてある。
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