恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
「なあ、眞玖」


少し屈んだ彼が私の耳元でそっと囁く。

色香のこもった声に、肩がビクリと跳ねた。


「泣きたくなったら、連絡しろ。すぐに帰国するから」


「なん、で」


「……心配なんだ」


吐き出された声が苦し気に掠れている。


「私は、大丈夫、藤宮くんのほうが新しい環境で大変でしょ?」


「俺の話はどうでもいい。我慢も無理もしないって約束しろ」


「わかったけど……急にどうして? なにかあった?」


自分もだが、いつもと違う彼の様子に心が落ち着かない。


「さあな、強いて言えばやっと答えが見つかったってところかな」


独り言のようにつぶやく。

それは将来の方向性、進む道、覚悟が決まったという意味だろうか。


「……体に、気をつけてね。ずっと応援してるから」


言いたいことはほかにあるような気がするのに、口から零れたのはそれだけだった。


「ありがとう。じゃあ出発前に見送りに来てくれる?」


「もちろん。いつ?」


ふわりと頬を緩める気配に、鼓動が激しくなる。


「正確な時間がわかったら連絡する。おとなしく俺を待ってろよ?」


低く、聞きなれた声が耳に届く。

屈みこみ、顔を覗きこまれ、ごくりと喉がなった。
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