恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
「なんで五十嵐のご令嬢が匡のところで勤務しているんだ?」
峰岡専務が尋ねる。
「五十嵐の祖父と俺の祖父が知り合いで、将来会社を継ぐ兄の秘書になるため、妹の修業をさせてほしいと頼みこまれたらしい」
「なるほど……ご令嬢は確か俺たちと同じ年齢だったか?」
「二十六歳くらい?」
「……匡、秘書に興味なさすぎだろ」
「俺の秘書じゃないからな。俺が興味があるのは眞玖だけだ」
そう言って、藤宮くんが穏やかな眼差しを向けてくる。
突然話を振られ、箸を持つ指が震えそうになる。
「なあ眞玖、うちに転職しない?」
思いがけない誘いに目を見開く。
「ちょっと待て、うちは長谷部がいないと困る」
「うちにも眞玖の力が必要なんだ。宰は十年近く独占してただろ」
……やっぱり仕事面での“興味”か。
必要としてくれるのは嬉しい。
だけど、鋭い棘が刺さったように胸が痛む。
勝手な思い違いをした自分が恥ずかしい。
この間の婚約話を否定しつつも、どこかで期待している浅はかな自分を思い知る。
「有難いお話だけど……今はプロジェクトもあるから」
必死に平静を保って、やんわりと断る。
「プロジェクトがひと段落したら考えてくれる?」
「ずいぶん先の話になるから……」
「今すぐじゃなくていい。真剣に検討してほしいんだ」
「おい、堂々とうちの社員をしつこくスカウトするなよ」
不機嫌そうに峰岡専務が口を挟む。