恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
「優秀な人材の確保は大事だろ。帰国後、眞玖が開発した商品を目にして、センスに惚れ惚れしたよ」


「私だけの力ではないけれど、ありがとう」


手放しの賛辞に礼を伝える。

まさか彼が私の開発商品を知っているとは思わなかった。

嬉しさで心の中がふわりと温かくなる。


「長谷部は“ハッピーカフェ”への思い入れが人一倍強かったからな」


すべてを見透かしたような目で、専務が私を見つめる。

峰岡専務のように甘いものが苦手な人、甘い飲料が好きな人、それぞれが同じように楽しめる商品作りを目指し、開発したのが“ハッピーカフェ”だ。

開発に没頭していくうち、この商品を無事に世に送り出したら藤宮くんに連絡しよう、と勝手に決心していた。

結果的に、意気地なしな私が行動することはなかったけれど。

元々、私が峰岡専務の誘いを受けて就職したのは、学生時代からなにひとつ敵わなかった藤宮くんへの勝手な敵対心が大きかった。

今さら藤宮商事に転職するのはどこか後ろめたい。

それに彼と顔を合わせる機会が増えれば平静さを保てない。

今日ですら緊張して、婚約話の確認もできないのに。


「転職の件は長谷部に任せるが、相談はしろよ」


面倒見の良い専務が、気遣わし気な目を向けてくる。

転職したいと私が本気で口にすれば、きっと反対せず円満に退職させてくれるだろう。


「……ありがとうございます」


「眞玖、いい返事を期待している」


峰岡専務に礼を伝えた私に、藤宮くんが話しかけてくる。


「考えておきますが、期待しないでください」


せっかくのお祝いの雰囲気を壊さないよう、無難な回答をする。


「残念、フラれたな」


藤宮くんは白い歯を見せて言い放つ。
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